デイトレーダーは「バカで浮気で無責任」か
デイトレーダーについて、経済産業省の北畑隆生事務次官が次のように述べた。
経営にまったく関心がない。本当は競輪場か競馬場に行っていた人が、パソコンを使って証券市場に来た。最も堕落した株主の典型だ。バカで浮気で無責任というやつですから、会社の重要な議決権を与える必要はない。
● 経産次官「デイトレーダーはバカで無責任」 講演で発言 (asahi.com 2008.2.8.)
デイトレーダーは「バカで浮気で無責任」なのか。
経済産業省の次官が、このような観点でデイトレーダーを批判するのは適切か。
適切ではない。
デイトレーダーなしでは、経済も産業も成り立たないのだ。デイトレーダーは、経済・産業に必要不可欠なのである。
なぜか。
デイトレーダーは、市場に流動性を与えているのだ。
長期投資家がある会社の株を買おうとしたとする。しかし、売ってくれる人がいなければ買うことは出来ない。その株を売ってくれるのはデイトレーダー(短期投資家)なのだ。
長期投資家が株を売る場合も同様である。売るためには、買ってくれる人が必要なのだ。その時、偶然、長期投資家が株を買ってくれる確率はとても低い。何しろ、長期投資家は売買する回数が少ないのだ。買ってくれるのはデイトレーダーだ。
さらに考えてみよう。デイトレーダーがいなければ、売りたい時に株を売れなくなる。売りたい時に売れないものを買う人がいるだろうか。流動性がなければ、市場自体が成立しなくなる。
デイトレーダーがいなければ、株式を公開すること自体が不可能になる。株式を公開しようとしても、買う人がいなくなってしまう。産業界が資金を調達できなくなる。
つまり、現在の経済・産業自体が成り立たなくなる。
次のようなたとえが分かり易い。
デイトレーダーは微生物なのだ。
我々の世界は、微生物なしでは成り立たない。
確かに、納豆菌は、大豆を納豆にしようとは思っていない。つまり、納豆菌は、大豆の「経営にはまったく関心」がない。だからと言って、納豆菌が「バカで浮気で無責任」だと批判する人がいたら、その人はどうかしているだろう。さらに、その人が納豆会社の社長だったら、正気を疑われるだろう。(笑)
経済産業省の次官がデイトレーダーを「バカで浮気で無責任」と批判するのは、これと同じである。とても正気とは思えない。
デイトレーダーは経済・産業に必要不可欠なのである。
デイトレーダーは納豆菌なのである。
納豆会社の社長ならば、納豆菌にはお礼を言うべきであろう。(笑)
諸野脇@ネット哲学者