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2009年04月 アーカイブ

2009年04月15日

敵味方刑法 --戸田ひさよし議員失職を考えるための論理

 2005年12月8日、戸田ひさよし・門真市議は大阪府警に逮捕された。
 そして、接見禁止のまま三ヶ月間拘留されたのである。
 議員本人が逮捕されて、そのまま三ヶ月間拘留されるとは、大変な事態である。
 この事態からどのような容疑が想像されるか。 

 門真市に総工費200億円でダムを造ることになった。
 戸田議員は、○○建設から一億円の賄賂をもらい、○○建設が有利になるように働きかけていた。
 そして、○○建設が門真ダム工事を受注した。

 議員を三ヶ月間拘留するには、それなりの犯罪容疑が必要である。
 例えば、このような大規模な汚職である。
 しかし、門真市にダムを造るという話は聞かない。
 それでは、現実には戸田ひさよし議員はどのような容疑で三ヶ月間拘留されたのか。次のような「政治資金規正法違反」の容疑でである。
 1、全日本建設運輸連帯労組関西生コン支部(連帯ユニオン関生=かんなま=支部)の有志から90万円のカンパを受け取ったこと

 2、同労組近畿本部委員長として、同労組から報酬として毎月20万円を3年分、計720万円を受け取ったうち毎月10万円分、計360万円を政治献金として受け取っていたこと
  http://www.news.janjan.jp/government/0903/0903159406/1.php


 は?
 90万?
 毎月10万? 
 この程度の容疑で、どうして三ヵ月も拘留する必要があったのか。
 「政治資金規正法違反」の容疑ならば、通常、任意の取り調べで済むはずである。一度書類を押収してしまえば、証拠隠滅の恐れもない。
 大阪府警の行動は異常である。
 そして、判決も異常であった。 
 06年8月、大阪地裁で罰金110万円、追徴金計450万円、公民権停止2年の有罪判決を受けました。控訴審の大阪高裁は公判を1回開いたきりで、翌07年4月に地裁判決を基本的に踏襲する判決を出しました。
  〔同上
 
 最高裁は、控訴棄却によってこの判決を確定させた。
 問題は、「公民権停止」という罰をくだしたことである。
 議員にとって、「公民権停止」は「死刑判決」である。議員としての資格を失わせる判決である。
 これは、通常、罰金刑で済ませる案件である。
 なぜ、こんな小さい案件で「死刑判決」をくだすのか。「政治資金規正法違反」という形式犯で「死刑判決」をくだすのか。 
 このような事例で「死刑判決」をくだすことが前例になれば、大変なことになる。
 同様の事例はたくさんあるのである。 
 さて、容疑事実について検討します。まず、第1の90万円のカンパです。OBを民主党や社民党の地方議員として送り込んでいる労働組合は全国にごまんとあります。組合の現職幹部がカンパ帳を組合員に回してまとめ、それを議員サイドに(個人献金の合計として)渡しているわけです。それが違法として立件されたという事例は聞きません。戸田さんだけが狙い撃ちにされたわけです。

 第2の、戸田さんに対する組合役員としての報酬についてはどうか? 検察側は「近畿地方本部委員長としての報酬は10万円で十分。月20万円ももらっていたうちの10万円分は政治献金だ」と決め付けました。しかし、本来、報酬は組合内部で決める話です。組合幹部として20万円が高すぎる報酬とも思えません。

 会社員や会社経営者と兼務している市議など他にもたくさんいます。これらの人たちも、それぞれが属している企業から献金を受け取っていることになるのでしょうか。検察の平衡感覚はどうなっているのか? 理解に苦しみます。
  〔同上

 
 同じことをしている議員はたくさんいるのである。
 その全員を逮捕しなければならなくなる。(苦笑)
 そうでなければ、平等ではない。
 しかし、警察がどんどん議員を逮捕しているという話は聞かない。 
 戸田ひさよし氏だけが特別に逮捕されたのである。

 この「特別扱い」をどう解釈するべきか。
 戸田ひさよし氏だけが、厳しく扱われているのである。
 戸田ひさよし氏の弁護を担当した永嶋弁護士は次のように言う。 
 敵・味方刑法に向かいつつあるのではないか。
  http://www.hige-toda.com/x/c-board/c-board.cgi?cmd=one;no=2337;id=01#2337
 
 国家の「味方」には甘く、「敵」には厳しくする法律の運用がおこなわれているというのである。「敵」と「味方」で扱いを変えているというのである。
 そのような不公平な扱いがおこなわれているのならば大きな問題である。
 不公平は正さなければならない。
 捜査当局・裁判所は次のうちのどちらかをおこなうべきである。(もちろん、どちらも出来ないであろうが。)
 
 1 戸田ひさよし議員と同様の行為をおこなっている議員を全員「三ヵ月拘留」のうえ「公民権停止」にする。
 2 戸田ひさよし議員を「三ヵ月拘留」し「公民権停止」にした合理的な根拠を示す。例えば、汚職の事実があったことなどを示す。
 
 戸田ひさよし氏が受けた扱いは、「政治資金規制法違反」の「犯人」への扱いではない。
 大規模な汚職事件の犯人への扱いである。または、殺人事件の犯人への扱いである。
 しかし、戸田ひさよし氏は、汚職もしていないし、殺人もしていないのである。
 何かがおかしい。
 これがこの国の現状である。 
 敵味方刑法
 
 この用語を覚えておくべきである。
 
                  諸野脇@ネット哲学者

2009年04月16日

国策捜査 --小沢一郎議員秘書の逮捕を考えるための論理

 小沢一郎議員の秘書が「政治資金規正法違反」の容疑で逮捕された。
 この逮捕は〈「国策捜査」ではないか〉と疑われている。逮捕が衆議院選挙の前の時期だったからである。〈民主党にダメージを与えるための捜査ではないか〉と疑われているのである。
 この問題をどう考えればいいのか。
 元東京地検特捜部長・宗像紀夫氏は言う。 

 ……〔略〕……検察の伝統的な考え方では、政治資金規制法違反というのは、例えば多額のウラ金を収得していたようなケースでない限り、事件の最終目的とはなりえないからです。第2、第3の、贈収賄や脱税などのより悪質、重大な犯罪の摘発が後に控えているときにのみ、政治資金規制法違反による強制捜査といった例外的な捜査手法が許されるのです。だから、「この時期にこんな事件で政治家の秘書を逮捕するのはおかしい」と言われたら、「最後まで見ていて下さい」と言えばいいのです。つまり、きちんとした捜査の結果を出すことがいちばん説明責任を果たすことになるのです。だからもし、仮に今回の事件が政治資金規制法違反だけで終わるようなことになるとすれば、あまりにも強引な捜査だったということになるでしょう。
  〔『朝日新聞』2009.4.1.〕
  
 宗像紀夫氏は特捜部長だった人である。だから、検察の「伝統的な考え方」はよく知っているはずである。
 検察では、「政治資金規制法違反」は「事件の最終目的」にはならない。逮捕というような「強引な捜査」が許されるのは、「贈収賄」などのより悪質な「犯罪の摘発」の場合である。
 さらに、宗像紀夫氏は次のような例を挙げる。 
 ……〔略〕……ちなみに、リクルート事件の時も、3人の自民党有力政治家の秘書や政治団体の会計責任者を政治資金規制法違反(虚偽記載、量的制限違反)で摘発しました。金額は数千万~数億円でしたが、いずれも在宅で調べて、略式起訴でした。
  〔同上〕
 
 億の単位でも、「在宅」捜査だったのである。
 政治家の秘書を逮捕したら、「結果」を出さなくてはならない。「結果」とは「贈収賄」などのより悪質な「犯罪の摘発」である。 
 検察が「贈収賄」を摘発できるか。
 
 これが「国策捜査」かどうかの判断の基準である。検察は「贈収賄」などの悪質な「犯罪の摘発」ができるか。「結果」を出せるか。
 「結果」を出せなかったら、「国策捜査」ではないかと疑われても仕方ない。
 
 読者の皆さんの頭の中には、当然、次の文章との比較が生じたはずである。
 
   ● 敵味方刑法 --戸田ひさよし議員失職を考えるための論理
  
 戸田ひさよし議員は「政治資金規制法違反」で逮捕された。
 しかも、総額450万円の事案である。
 このような事案で、議員本人を逮捕するのは著しく「検察の伝統的な考え方」に反する。リクルート事件では、億の事案でも逮捕はされなかったのである。秘書すら逮捕されなかったのである。
 しかも、戸田ひさよし氏の場合、検察が「結果」として考える「贈収賄」などのより悪質な「犯罪の摘発」も無かったのである。「結果」を出していないのである。 
 戸田ひさよし氏は権力の「敵」だから厳しい扱いを受けたのではないか。
 
 「結果」を出していないのだから、このように「敵味方刑法」が疑われるのも当然である。
 小沢一郎氏の秘書の逮捕も「敵味方刑法」が疑われる事案である。権力の「敵」だから厳しい扱いを受ているのではなかと疑われているのである。
 
 「国策捜査」・「敵味方刑法」の特徴は、〈ダブルスタンダード〉である。相手によって、基準を変えるのである。
 「敵」だから厳しくする。「国策」だから厳しくする。
 〈ダブルスタンダード〉である。
 
 だから、〈「国策捜査」ではないか〉という疑いを否定するのは簡単である。〈ダブルスタンダード〉ではないことを示せばいい。検察が「結果」を出せばいい。「贈収賄」などの「犯罪の摘発」をおこなえばいいのである。
 検察は、「贈収賄」をおこなった者は誰でも逮捕する。(これは検察の「伝統的な考え方」である。)これならば、〈ダブルスタンダード〉ではない。 
  その捜査が〈ダブルスタンダード〉でないかを検討しよう。
  
 「国策捜査」・「敵味方刑法」、どちらも〈ダブルスタンダード〉を主要な特徴とする行為だからである。
 
                  諸野脇@ネット哲学者
 

2009年04月17日

インターネット上で「問題」を起こすという広報活動 --竹原信一市長失職を考えるための論理

 竹原信一市長の失職が予想されている。本日、十時からの市議会で失職が決まるであろう。

 ブログを使った議会批判などで議会と対立し、不信任を受けた鹿児島県阿久根市の竹原信一市長(50)が議会を解散したことに伴う出直し市議選(定数16)が22日、投開票され、市長失職を目指す反市長派が過半数を確保した。
これにより、改選後の市議会で2度目の不信任案が可決されて市長が失職する公算が大きくなった。失職すると5月中にも出直し市長選が行われる。
  http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090322-OYT1T00958.htm?from=nwlb

 しかし、心配には及ばない。
 市議会選挙前に、既に竹原信一市長は言っている。 
今回は誰が議員としての仕事が出来るかというよりも、市民がどれだけ悪くないのを選べるかという選挙だ。これで粗大品は整理される。
私は議会を掃除する為に解散をさせた。次に私が片付けられる。
  ● 2009/03/13 (金) お掃除選挙
 
 「次に私が片付けられる」とある。
 既に、自分の失職は織り込み済なのである。
 そして、再度、竹原信一氏は市長選に立候補するのである。(これも予告済である。)
 
 一見、これは無駄なように思える。しかし、無駄ではない。
 その過程で、有権者に情報が伝わるのである。もめればもめるほど、有権者に情報が伝わっていく。
 竹原信一市長は失職した方がいいのだ。
 
 失職した方が有権者に情報が伝わる。
 竹原信一氏がインターネット上で「問題」を起こす度に、有権者に情報が伝わっていく。
 「問題」をマスコミが取り上げるからである。
 この構造が興味深い。

                 諸野脇@ネット哲学者

インターネットによる動画配信が議会を変える --竹原信一市長失職の様子がリアルタイムで確認できる!

 現在、阿久根市議会の様子が生中継されている。(注)
 
   ● 市議会中継  
  
 この中継により竹原信一市長の不信任案可決の様子をリアルタイムで見ることが出来る。どのような不当(または正当)な手続きで不信任案が可決されるかを確認することが出来る。
 また、「市議会中継記録」として過去の議会の様子も動画で見ることが出来る。議会の様子が動画配信されている。
 これは素晴らしいことである。
 
   ● 議会の〈情報公開〉こそ「変革」の中心   
 
 議会で何がおこなわれているかを知らなければ、有権者は議会を「変革」する必要性を感じない。
 〈情報公開〉こそ「変革」の中心なのである。
 
 多くの自治体が議会中継に取り組んでいる。グーグルで「議会中継」を検索するとたくさんのページがヒットする。

   http://www.google.co.jp/search?hl=ja&rlz=1T4GGLD_jaJP311JP311&q=%E8%AD%B0%E4%BC%9A%E4%B8%AD%E7%B6%99&btnG=%E6%A4%9C%E7%B4%A2&lr=
 
 この〈情報公開〉が議会を変えていく。有権者が見ているところで、いいかげんなことは出来ないからである。アクビをする議員、マンガを読む議員は確実に減っているだろう。(苦笑)
 インターネットによる〈情報公開〉が世界を変えるのである。
 
                諸野脇@ネット哲学者


(注)

 この情報は、そうるふれんど氏のブログで知った。
  
   ● 臨時議会を傍聴しよう!!  
  
 お礼申し上げる。

2009年04月18日

祝・竹原信一市長失職! --阿久根市民は「覚醒」するか

 不信任決議案が可決され、予定通り竹原信一市長が失職した。
 これは竹原信一氏の予定でもあった。
 そして、竹原信一氏は出直し市長選挙に出馬する。
 
   ● インターネット上で「問題」を起こすという広報活動 --竹原信一市長失職を考えるための論理
   
 竹原信一市長が「問題」を起こすたびに有権者に情報が伝わってきた。
 マスコミに取り上げられてきた。例えば、次のような文章である。
 
   ● ブログ市長の「切ない」思い
 
 
 今度の出直し市長選挙でも、情報が有権者に伝わるであろう。これは有権者への広報活動なのである。
 かつて、竹原信一市長は次のように言った。

 実は、議員定数削減案が今の市議会で成立できるとは考えていなかった。私は議会の本当の姿を市民に知ってもらう道具として提案した。

私が議員の時に提案した浄化槽管理費削減の決議案にまで反対した市議会である。今回は定数削減に反対、浄化槽管理費削減の規則改正にも反対、市民に駐車場を確保する事にも反対、手数料値下げ案にまで反対してくれた。
予想をはるかに超える反応をしてくれている。

 議員たちが自らの値打ちをとことん下げて市民に覚醒の機会を与えている。私は阿久根市議会議員達に感謝している。この市議会でなければ阿久根市民を変えることはできない。
   ● 2008/10/31 (金) 阿久根を変えるということ


 今回も、竹原信一氏は阿久根市議会に「感謝」しているであろう。(笑)
 阿久根市議会が、また「本当の姿」を現してくれたのである。
 阿久根市議会は、議員定数削減・市職員の給与の削減を主張する竹原信一市長を失職に追い込んだ。
 これによって、出直し市長選がおこなわれる。出直し市長選は、マスコミに注目されるであろう。だから、竹原信一氏の主張も、対立候補の主張も有権者に伝わるであろう。(注)
 阿久根市議会は、阿久根市民に「覚醒」の機会を与えてくれたのである。阿久根市の現状について深く考える機会を与えてくれたのである。
 ありがたいことである。(笑)
 
               諸野脇@ネット哲学者


(注)

 竹原信一氏の目標は市民の「覚醒」である。
 だから、竹原信一氏にとっては、出直し市長選挙での勝敗はどうでもいいことである。「覚醒」した市民が対立候補を選ぶならば、それはそれでいいのである。
 

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