敵味方刑法 --戸田ひさよし議員失職を考えるための論理
2005年12月8日、戸田ひさよし・門真市議は大阪府警に逮捕された。
そして、接見禁止のまま三ヶ月間拘留されたのである。
議員本人が逮捕されて、そのまま三ヶ月間拘留されるとは、大変な事態である。
この事態からどのような容疑が想像されるか。
門真市に総工費200億円でダムを造ることになった。
戸田議員は、○○建設から一億円の賄賂をもらい、○○建設が有利になるように働きかけていた。
そして、○○建設が門真ダム工事を受注した。
議員を三ヶ月間拘留するには、それなりの犯罪容疑が必要である。
例えば、このような大規模な汚職である。
しかし、門真市にダムを造るという話は聞かない。
それでは、現実には戸田ひさよし議員はどのような容疑で三ヶ月間拘留されたのか。次のような「政治資金規正法違反」の容疑でである。
1、全日本建設運輸連帯労組関西生コン支部(連帯ユニオン関生=かんなま=支部)の有志から90万円のカンパを受け取ったこと2、同労組近畿本部委員長として、同労組から報酬として毎月20万円を3年分、計720万円を受け取ったうち毎月10万円分、計360万円を政治献金として受け取っていたこと
http://www.news.janjan.jp/government/0903/0903159406/1.php
は?
90万?
毎月10万?
この程度の容疑で、どうして三ヵ月も拘留する必要があったのか。
「政治資金規正法違反」の容疑ならば、通常、任意の取り調べで済むはずである。一度書類を押収してしまえば、証拠隠滅の恐れもない。
大阪府警の行動は異常である。
そして、判決も異常であった。
06年8月、大阪地裁で罰金110万円、追徴金計450万円、公民権停止2年の有罪判決を受けました。控訴審の大阪高裁は公判を1回開いたきりで、翌07年4月に地裁判決を基本的に踏襲する判決を出しました。
〔同上〕
最高裁は、控訴棄却によってこの判決を確定させた。
問題は、「公民権停止」という罰をくだしたことである。
議員にとって、「公民権停止」は「死刑判決」である。議員としての資格を失わせる判決である。
これは、通常、罰金刑で済ませる案件である。
なぜ、こんな小さい案件で「死刑判決」をくだすのか。「政治資金規正法違反」という形式犯で「死刑判決」をくだすのか。
このような事例で「死刑判決」をくだすことが前例になれば、大変なことになる。
同様の事例はたくさんあるのである。
さて、容疑事実について検討します。まず、第1の90万円のカンパです。OBを民主党や社民党の地方議員として送り込んでいる労働組合は全国にごまんとあります。組合の現職幹部がカンパ帳を組合員に回してまとめ、それを議員サイドに(個人献金の合計として)渡しているわけです。それが違法として立件されたという事例は聞きません。戸田さんだけが狙い撃ちにされたわけです。第2の、戸田さんに対する組合役員としての報酬についてはどうか? 検察側は「近畿地方本部委員長としての報酬は10万円で十分。月20万円ももらっていたうちの10万円分は政治献金だ」と決め付けました。しかし、本来、報酬は組合内部で決める話です。組合幹部として20万円が高すぎる報酬とも思えません。
会社員や会社経営者と兼務している市議など他にもたくさんいます。これらの人たちも、それぞれが属している企業から献金を受け取っていることになるのでしょうか。検察の平衡感覚はどうなっているのか? 理解に苦しみます。
〔同上〕
同じことをしている議員はたくさんいるのである。
その全員を逮捕しなければならなくなる。(苦笑)
そうでなければ、平等ではない。
しかし、警察がどんどん議員を逮捕しているという話は聞かない。
戸田ひさよし氏だけが特別に逮捕されたのである。
この「特別扱い」をどう解釈するべきか。
戸田ひさよし氏だけが、厳しく扱われているのである。
戸田ひさよし氏の弁護を担当した永嶋弁護士は次のように言う。
敵・味方刑法に向かいつつあるのではないか。
http://www.hige-toda.com/x/c-board/c-board.cgi?cmd=one;no=2337;id=01#2337
国家の「味方」には甘く、「敵」には厳しくする法律の運用がおこなわれているというのである。「敵」と「味方」で扱いを変えているというのである。
そのような不公平な扱いがおこなわれているのならば大きな問題である。
不公平は正さなければならない。
捜査当局・裁判所は次のうちのどちらかをおこなうべきである。(もちろん、どちらも出来ないであろうが。)
1 戸田ひさよし議員と同様の行為をおこなっている議員を全員「三ヵ月拘留」のうえ「公民権停止」にする。
2 戸田ひさよし議員を「三ヵ月拘留」し「公民権停止」にした合理的な根拠を示す。例えば、汚職の事実があったことなどを示す。
戸田ひさよし氏が受けた扱いは、「政治資金規制法違反」の「犯人」への扱いではない。
大規模な汚職事件の犯人への扱いである。または、殺人事件の犯人への扱いである。
しかし、戸田ひさよし氏は、汚職もしていないし、殺人もしていないのである。
何かがおかしい。
これがこの国の現状である。
敵味方刑法
この用語を覚えておくべきである。
諸野脇@ネット哲学者