【オリコン訴訟】企業の危機管理を考えるためのよい事例 ――世界的に悪評を広めてしまったオリコン・小池恒社長の行動
オリコンは烏賀陽弘道氏に謝罪するべきである。
既に詳しく論じた。
● オリコン・小池恒社長は烏賀陽弘道氏に謝罪するべきである
筋として、烏賀陽弘道氏に被害を与えたオリコンは謝罪するべきである。
そして、実は、謝罪した方がオリコンのためなのである。
烏賀陽弘道氏は言う。
老婆心ですが、ぼくな、らサイゾー証言が出た時点で「私たちの提訴は事実誤認でした」「烏賀陽さんには長年たいへんご迷惑をおかけしました」「心よりおわびします」と会見して頭を下げるでしょう(ほら、産地偽装事件で食品会社がやっていたアレです)。いえいえ、ぼくが被害者だからそう言っているのではありません。そうして「できるだけ早く」「できるだけ過ちを認めて」「できるだけ誠実に謝る」方がパブリック・イメージの好感度は高いからです。そして早く世論は忘れます。
逃げれば逃げるほど、隠せば隠すほど世論は攻撃します。これは企業経営の「危機管理」という分野ではイロハのイです。おわび会見など、1時間ほどガマンすればいいだけの話ではありませんか(笑)。「人の噂など××日」です。私はずっとマスコミで生きている人間として、よーく知っています。
ですから、どうかオリコンさん、企業イメージのためには自発的に会見を開いて謝ったほうがいいですよ。和解条項に謝罪が入っていなくても、企業市民としての倫理的責任はまだ残っています。ここはコーポレートイメージを挽回する最後のチャンスですよ。ぜひ災い転じて福となしてほしいものです。
● 「和解」という名の建物の中で自決してしまったオリコン
その通りである。
アメリカでは「銃の弾を全て出す」といった慣用句を使うと聞いたことがある。これは〈火種を残さない〉という意味である。弾を全て出してしまえば、発射できない。批判される可能性がある悪いところを全て謝罪するれば、批判されない。
オリコン・小池恒社長が会見を開き、次のように謝罪したとする。
「私たちの提訴は事実誤認でした」「烏賀陽さんには長年たいへんご迷惑をおかけしました」「心よりおわびします」
謝るべきところにきちんと謝ったことになる。批判のしようがなくなる。
オリコン・小池恒社長がこのような謝罪をしていれば、私は先の文章を書けなくなった。例えば、次のような批判は出来なくなった。
オリコン・小池恒社長は、かなり異常な感覚を持っているようである。
謝罪していれば、「異常な感覚」ではない。正常な感覚を持っていることになる。
だから、このような批判は出来なくなる。
つまり、きちんと謝罪した方が得なのである。
きちんと謝罪すると火種がなくなる。批判する種がなくなる。批判できなくなる。
オリコンは笹浪雅義弁護士に依頼して、この訴訟を起こした。その結果が、「請求の放棄」という惨めな全面敗訴である。
また、評判という観点でも、オリコンは大きなダメージを受けている。
オリコンは、国境なき記者団から勧告を受けた初めての日本企業であろう。「報道の自由という基本的人権をはなはだしく犯している」と指摘された初めての企業であろう。
多くの団体・個人がオリコンを批判した。
詳しくは次の文章をお読みいただきたい。
● インターネットはオリコンを倒せるか
● 江川紹子氏・佐高信氏がオリコンを批判する意見書
オリコンは、この評判悪化の危機を乗り切らなくてはならない。
そのためには、笹浪雅義弁護士ではなく、危機管理コンサルタントを雇うべきではないか。
私はずっとそう思ってきた。
国境なき記者団に批判してもらいたいと思っても、普通の企業では無理である。江川紹子氏や佐高信氏に批判してもらいたいと思っても、普通の企業では無理である。オリコンはスペシャルな企業なのである。
日本の一企業が世界から批判を集めるなど、不可能に近い「快挙」である。(苦笑)
危機管理の専門家には、ぜひ、オリコン・小池恒社長の行動の分析をしてもらいたい。オリコン・小池恒社長の行動は危機管理上の間違いの宝庫である。
分析しがいがあるはずである。
諸野脇@ネット哲学者
〔補〕
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◆ オリコンVS.烏賀陽 訴訟 アーカイブ