昔、おばあちゃんは言った。
人にしたことは自分に返ってくる。
オリコンは、SLAPP(恫喝訴訟)のとがめを受けるかもしれない。
自分の掘った穴に落ちるかもしれない。
オリコンは、烏賀陽弘道氏だけを相手に名誉毀損の損害賠償訴訟を起こした。五千万円という高額の賠償を求めたのである。そして、なぜか、雑誌『サイゾー』の発行会社であるインフォバーンは訴えなかった。
おかしな話である。
損害を回復したいならば、当然、インフォバーン社も訴えるはずである。
個人が五千万円という金額を払えるとは考えにくい。
しかし、会社であれば払える。
だから、一般に、名誉毀損による損害賠償訴訟では会社も一緒に訴えるのである。
個人だけを取り出して訴えるのには「腹黒い」意図があると考えざるを得ない。SLAPPであると考えざるを得ない。烏賀陽氏を恫喝し黙らせるための訴訟であると考えざるを得ない。(注1)
その「腹黒い」行為がオリコンに返ってくる可能性がある。個人だけを訴えたことが裏目に出る可能性がある。
先に説明した烏賀陽氏側の新しい主張を思い出していただきたい。
そもそも烏賀陽弘道氏はそのような内容を発言していない。
この主張が認められれば、次のような結論が出る。
烏賀陽氏は発言していない。発言していないことを名誉毀損には問えない。
だから、オリコンの負け。
この主張が見事に決まると、オリコンにとっては最悪の結果になる。(注2)
責任を取らせる相手がいなくなってしまうのである。次の事実に注目していただきたい。
仮にインフォーバーン社に名誉毀損の責任があったとしても、オリコンはインフォバーン社に責任を取らせることが出来ない。訴えていないのだから。
手も足も出ないのである。
仮に雑誌『サイゾー』に載った「コメント」がオリコンの名誉を毀損するものだったとする。その場合、烏賀陽氏が「発言していない」ならば、責任があるのは『サイゾー』編集部・インフォバーン社である。誰かがその「コメント」を作ったのは間違いないのである。(注3)
しかし、オリコンは、インフォバーン社に責任を取らせることが出来ない。訴えていないのだから。
普通に名誉毀損訴訟を起こしておけば、そのような状態にはならない。インフォバーン社も訴えておけば、そのような状態にはならない。しかし、個人だけを狙い撃ちにしたために、何も出来なくなってしまう。無様に負けてしまう。(注4)
自分で掘った穴に自分で落ちたのである。
SLAPPが裏目にでたのである。自業自得である。
おばあちゃんの言うことは聞くものである。(笑)
諸野脇@ネット哲学者
(注1)
次の文章をご参照いただきたい。オリコンは、〈言論抑制目的〉であることを自ら明言している。
● オリコンが明言した「殺意」を無視する異常な判決
● ジャーナリスト個人を対象にした高額訴訟の不当性 --反SLAPPの論理
(注2)
実は、オリコンにとって本当に最悪なのは、最高裁まで行って勝ってしまうことである。
● オリコン、高裁で勝訴したら大変だぞ(笑)
最高裁で勝ってしまったら、もっと大変である。
オリコンはジャーナリズムの歴史に大きな汚点を残すことになる。
(注3)
これは、あくまでも仮定の話である。
もちろん、雑誌『サイゾー』に載った「コメント」は、オリコンの名誉を毀損する内容ではない。
全て、事実または事実と考えるに相当な理由がある内容である。
(注4)
オリコンは、敗訴しても利益を得るという観点がある。
SLAPPは「恫喝」が目的である。「恫喝」に成功すればいいのである。烏賀陽氏を疲弊させることが出来ればいいのである。
この観点から見れば、オリコンは勝訴しても敗訴しても利益を得る。
だから、〈訴え得〉を防止するシステムが必要である。
次の文章で詳しく論じた。
● ジャーナリスト個人を対象にした高額訴訟の不当性 --反SLAPPの論理
また、この訴訟をきっかけに、オリコンにとって都合の悪い事実が次々と報道されている。
その事実を次の文章で示した。
● インターネットはオリコンを倒せるか
これも〈訴え得〉を防止するシステムである。
相手が「訴えるんじゃなかった」と後悔する位、報道を続けるのである。