〈いじめ〉を理解するために事例を分析する。重要な事例である。
女子高生のスカートの長さ
東京に住んでいると、短いスカートの女子高生ばかり見る。極端なミニの女子高生もいる。女子高生と言えば、ミニスカートという意識がある。
しかし、大阪に赴任した日経新聞の記者は言う。
大阪に赴任した際、街中で見かける女子高生の制服のスカート丈が長いことに驚いた。東京ではふとももが見えるミニが主流だったのに、こちらはふくらはぎが半分隠れるくらい長い生徒が目立つ。独自のファッション感覚なのか。 (『日本経済新聞』2013年12月22日) http://www.nikkei.com/article/DGXNASIH1100H_R11C13A2AA1P00/
大阪では「スカートの丈が長い」のだ。
東京と大阪では、スカートの長さが大きく違う。東京はミニスカート。大阪はロングである。
大阪の女子高生はロングスカートを着る「理由」を次のように述べる。
府立高2年生は「短いのは安っぽいし、昔っぽい」ときっぱり。10人以上に聞いたが、学校では長い丈が主流という。「冬は防寒、夏は日焼け対策」という説明にもうなずける。(同上)
「冬は防寒、夏は日焼け対策」と言う。しかし、これは「後づけの理由」に過ぎない。この女子高生は、自分がスカートを長くしている理由を自覚できていないのだ。
現に、大阪より寒い東京ではスカートは短い。夏には、日にも焼けるだろう。それにも関わらず、東京ではスカートは短いのである。「防寒」や「日焼け対策」が理由ならば、東京でもスカートは長くなるはずだ。大阪の女子高生だけ「防寒」や「日焼け対策」への意識が高いのか。それは違う。
ずばり言えば、大阪の女子高生がスカートを長くしている理由は次の通りである。
周りの仲間が長くしているから。
「短いのは安っぽいし、昔っぽい」とは〈周りの仲間が短くしていない〉の言い換えに過ぎない。大阪では、周りの仲間がスカートを長くしている。だから、この女子高生も長くしているのだ。
例えば、「冬は防寒、夏は日焼け対策」と語っていた大阪の女子高生が東京に引っ越したと仮定してみよう。どうなるだろうか。
周りのスカートの長さにに合わせて、スカートが短くなる。
「冬は防寒、夏は日焼け対策」が理由ならば、スカートの長さは変わらないはずである。しかし、スカートの長さは変わるだろう。
大阪から東京に引っ越した女子高生が一人だけ違った格好をするのは難しい。だから、周りと同じ長さに変わるだろう。つまり、ミニスカートに変わるだろう。
現に、東京の女子高生は言っている。
東京の女子高生に大阪の写真を見せると「東京だと浮くけど、かわいい」と評判は上々。(同上)
長いスカートを着ていると、「東京だと浮く」のだ。大阪からの転校生が一人だけスカートを長くし続けるのは困難である。
だから、東京に引っ越した大阪の女子高生のスカートは短くなる。東京の女子高生の長さになる。
この大阪の女子高生がロングスカートを着る「理由」を述べたのと同じように、東京の女子高生もミニスカートを着る「理由」を述べている。
「長いとスタイルが悪く見える。膝上15センチメートルにハイソックスかタイツを履くのが奇麗な脚の黄金比。私服は長めのスカートが好きな子も、制服はミニが普通」(同上)
「長いとスタイルが悪く見える」のでミニスカートにしていると言うのだ。これも「後づけの理由」に過ぎない。
次の部分に注目して欲しい。「私服は長めのスカートが好きな子も、制服はミニが普通」
「長いとスタイルが悪く見える」ならば、私服でも「ミニが普通」になるはずである。私服では「スタイルが悪く見え」てもよいのか。よくはないだろう。
私服と制服でスカートの長さが変わっているのである。制服ではミニスカートを着なければならない理由がある。
それは、周りの仲間がミニスカートを着ているからだ。それこそ、寒かろうが日に焼けようがミニスカートを着なくてはならない。そうしないと「東京だと浮く」のだから。
この〈女子高生のスカートの長さ〉と〈いじめ〉は似ている。
どう似ているのか。
今後、詳しく論じていく。