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【いじめ論23】いじめの〈発生メカニズム〉

 いじめを解決するためには「爆発」が必要であった。「大きな力」が必要であった。
 隣の子供と机を付けない子供に対して、向山洋一氏は言った。

 ○○君、どうしたのですか。そうですか。言わないのですか。では、言うまで聞きましょう。
 http://shonowaki.com/2015/09/22_1.html

 
 そして、本当に「言うまで聞き」続けるのだ。子供は「言うまで」許してもらえない。「言うまで聞き」続けるのは「爆発」である。それは、子供にとっても、教師にとっても大変なことである。
 なぜ、このような「爆発」が必要なのか。それは、いじめが社会的ジレンマだからである。一度できてしまった社会的ジレンマをなくすのは困難なのだ。だから、「爆発」が必要であった。「大きな力」が必要であった。
 「爆発」は無くて済めばその方がいい。そのためには、いじめの予防が重要である。いじめが発生していなければ「爆発」は必要はない。社会的ジレンマが発生していなければ「爆発」は必要ない。「大きな力」は必要ない。
 予防のためには〈発生メカニズム〉を知る必要がある。いじめはどのように発生するのか。社会的ジレンマはどのように発生するのか。それを知る必要がある。
 既に、いじめの〈発生メカニズム〉を考えるための重要な鍵となる事実を述べた。いじめは二極化する。いじめが多発する学級といじめが無い学級とに極端に分かれる。中間が少なくなる。正規分布にならない。
 
    〈いじめを傍観する者の数〉は二極化している
     http://shonowaki.com/2015/06/14_1.html
 
 このような二極化が起こるのは、いじめが集団的現象だからである。周りの人々の行動が〈環境〉になるからである。お互いが影響を与え合うからである。
 お互いが影響を与え合った結果、いじめが無い学級が発生する。逆に、いじめが多発する学級が発生する。そのように二極化する。
 初期状態では、いじめを傍観する者の割合が学級によって大きく違う訳ではない。それが時間が経つにつれて二極化するのである。いじめを傍観する者が多い学級と少ない学級に二極化するのである。
 大まかに、二極化する過程を説明しよう。初期状態での小さな差が大きな差になる。いじめを傍観する者が多ければ、影響を与え合い傍観する者がさらに多くなる。いじめが多くなる。いじめを傍観する者が少なければ、影響を与え合い傍観する者がさらに少なくなる。いじめが少なくなる。
 最初の小さな差が、最終的に大きな差になってしまう。極端に違う状態になってしまう。社会的ジレンマが発生してしまう。
 このような社会的ジレンマの〈発生メカニズム〉を小川幸男氏は次のように説明する。(注)


 ある活動に対して、協力する生徒と、協力しない生徒は二つに分かれる。その活動に対する自らの行動の選択肢は、協力、非協力の二つしかないからである。しかし、実際に協力しようとする傾向は、……〔略〕……連続して様々に分布する。その時点で、同じ協力をしている生徒の中にも、多くの生徒が協力しているから協力している生徒もいれば、少人数しか協力しなくても協力している生徒もいる。
 これを図式化してみる。
rinkai.gif

 図1は、横軸に「ある時点で実際に行動に『協力』している生徒の割合(%)」、縦軸に「“横軸のある時点の割合以上ならば、自分も協力する”と考える生徒の割合(%)」をとるったものである。
 また、図1のグラフの棒グラフを左から累積していくと図2のようなグラフができる。図2のグラフの縦軸は、「実際に協力している生徒が横軸の割合のとき、協力しようと思う生徒の割合」を示している。
 図3は、図2のグラフを一般化したものである。
 この図からわかることは、自然の状態では次のようになることである。

 イその時点で実際に協力をしている割合が図3のA点より多ければ、その後に点Cの多くの生徒が協力している状態まで自然に上がる。
 ロその時点で実際に協力をしている割合が図3のA点より少なければ、その後、点Bのほとんどの生徒が協力しない状態まで自然に下がる。

 例えば、図3で65%の生徒が実際に協力しているときには、協力してもよいと考えている生徒は79%いる。つまり、65%の生徒が実際に協力している状態を見せれば79%の生徒は協力をしだすわけである。さらに79%の生徒が協力すれば、91%の生徒が協力してもよいと考え協力する。というように、この場合結果として95%の生徒が協力し、協力しない生徒が5%だけ残る状態で安定する。
 逆に、45%が実際に協力しているときには、協力してもよいと考える生徒は35%である。つまり、45%の生徒が実際に協力している状態を見せると35%しか協力しなくなってしまうのである。さらに、35%の生徒しか協力していない状態を見ると、22%しか協力しなくなってしまう。最終的な結果として、7%の生徒しか協力しなくなってしまうのである。
 多くの生徒が協力するようになる相互協力状態になるか、多くの生徒が協力しない相互非協力状態になるかの境目はこの場合、A点だということになる。


 A点より協力する人数が多ければ協力状態になる。少なければ非協力状態になる。坂を上るか、坂を下るかである。
 初期状態での小さな差が大きな差になる。いじめを傍観する者が多ければ、それを見ていじめを傍観する者がさらに多くなる。そして、最終的には、いじめ状態(非協力状態)に陥る。
 いじめを傍観せず止める者が多ければ、それを見ていじめを止める者がさらに多くなる。そして、最終的には、いじめが無い状態(協力状態)になる。
 最初の小さな差が最終的に大きな差になる。極端に違う状態になる。二極化する。
 それは、周りの人間の行動が〈環境〉になるからである。周りの人間の行動によって、自分の行動を決めるからである。
 確認しよう。協力者は次のように変化した。

 好循環  65%協力 → 79%協力 → 91%協力

 65%が協力しているのを見て14%が協力に加わる。それを見て12%が協力に加わる。そして、最終的には91%が協力するよい状態が発生する。
 逆も同様の原理である。

 悪循環  45%協力 → 35%協力 → 22%協力 → 7%協力

 45%しか協力していないのを見て10%が非協力に転ずる。それを見て11%が非協力に転ずる。それを見てさらに15%が非協力に転ずる。そして、最終的には7%しか協力しない悪い状態が発生する。
 最初の小さな差によって、極端に違う二つの状態が発生した。91%が協力する状態と7%しか協力しない状態である。
 周りの人間の行動によって、自分の行動を決める。それによって、雪崩れ的な変化が生じる。極端な状態が発生する。
 これが社会的ジレンマの〈発生メカニズム〉の理論モデルである。いじめの〈発生メカニズム〉の理論モデルである。


(注)

 次の論文である。

   明石要一・小川幸男「生徒会活動を通じた学校活性化の方法」
   『千葉大学教育学部研究紀要』第45巻 、1997年

 なお、小川幸男氏は長年にわたる研究仲間である。

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2015年09月25日 23:47に投稿されたエントリーのページです。

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